
ある夏の日、カウンターに40代くらいの女性。窓口の職員に「かさ」という字のつく俳優が出ている日本映画を探しているとの質問を受ける 傘? 笠? そんなやりとりを利用者と職員がしていたので別の作業がおわりわたしが引き継ぐ。やりとりから「笠智衆」だとわかったので「東京物語」や「彼岸花」「父ありき」「秋刀魚の味」などを紹介するもピンときてないかんじだった。どうもこの方は映画のことあまり知らないみたいで、どうやら義理のお父さん(しばらく寝たきり)から頼まれて探しにきたのだそう。松竹の作品に笠智衆をキーワードにて検索したら男はつらいよシリーズも出てきたのでこちらを紹介したら「これこれ!この人」と渥美清の表紙に反応してくれた。「そうか、御前様だ。」棚にあった寅さんのビデオを借りて行きました。

そして月日はながれ、ある日、邦画ビデオの棚の前で「おー!おー!」と唸る男性(高齢者)貸出時の利用カードで珍しい名前なので以前みえたUさんだと思った。(寝たきりのはずなのに)そこにお嫁さん登場。なんでも寅さんのビデオを見るうちに脳が活性化してみるみる元気になったそうです。この義父さんはなんでも東京の出身で近所に大きな川が流れているところで育ったみたいです。きっと寅さんシリーズを観ているうちに懐かしい気持ちになり生きる活力が湧いてきたのではないでしょうか!
その後Uさんは自分でバス(ぐるりん)に乗って来館し予約もできるようになりました♪

コラムを読んだAさんからのコメントをいただきました!
『遠間氏と以前一緒に図書館で働いていた者です。
先日、「ちょっといい話①」を拝読させていただき、私もUさんのことを思い出し、投稿(?)させていただきました。
Uさんは、図書館でお借りになったビデオを丁寧に大切に風呂敷に包んでくださっていました。その姿は、まるで古き良き日本映画のワンシーンのように美しく、今も鮮明に覚えています。
利用者との出会いは、図書館員の宝物だと思います。』